国土交通省 平成28年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果について③

福岡MPオフィスの松股です。

 

これまで2回連続で民間住宅ローンに関する国土交通省の調査結果について書いてきましたが、今回が3回目、最終回となります。

 

前回で4位までの項目について解説をしてきたので、今回は5位以下の項目についてです。

 

 

私の実務経験では、民間住宅ローンの審査において、このランキングの5位以下の項目こそ重視される項目が多いと断言できます。

 

【5位:勤続年数】

多くの金融機関では会社員(給与所得者)で1年か2年以上、自営業者や会社役員で2年か3年以上という規定があります。

中には勤続年数の規定がなく、勤続年数が短くても、転職の理由や転職前後の給与水準次第では、審査をしてくれるところもあります。

ただし規定の勤続年数を1ヶ月でも下回っていたら審査を受付けないという金融機関もたくさんあります。

「勤続年数=申込人の属性を見るポイントのひとつ」

審査項目として重視されることが多いのです。

 

【6位:年収、9位:返済負担率、10位:借入可能額(融資率)】

年収はローン返済の原資です。そして申込者の生活の原資です。

審査の際、「借入金額が年収の何倍か?」「年収にしめる返済額の割合(返済負担率)は何%か?」「申込人の家族構成から考えて、借入額や返済額は妥当なのか?」などを重視します。

これが規定に合わなかったり、審査する側の懸念事項となると、審査結果が否決になったり、減額回答があったりするのです。

 

【11位:雇用形態】

審査において、申込者が給与所得者であれば雇用形態を必ず重視します。

昨今は正社員ではなく契約社員、派遣社員という雇用形態が多い状況ですが、それらだと審査は不利になります。

住宅ローンは何十年という期間の貸付です。

正社員ではないということは、将来にわたっての収入の安定性に欠けてしますからです。

ただし正社員ではなくても、勤続年数次第では審査に通る場合もあります。

そこは申込む銀行への説明の仕方が重要になってきます。

 

【13位:カードローン等他の債務の状況や返済履歴】

なぜこの項目が13位なのか、私には不思議でなりません。

本来ならもっと上位に、3位以内に入っていてもおかしくない項目です。

ほとんどの金融機関では、事前審査の際に、現在の借入状況や返済履歴などの個人信用情報を調査します。

カードローンに限らず、マイカーローンや教育ローンも、その借入額が多額であれば審査に影響しますし、カードローンやフリーローンの借入残高があれば、その使途の説明を求められることもあります。

ましてやその返済に延滞の記録があれば、審査が厳しくなります。

またここ数年、「携帯電話の支払い延滞のため、住宅ローンの審査に通らない」という記事をよく見ます。

携帯電話機種代は、ほとんどが分割のクレジット払いです。

それは毎月の通話料や通信料と一緒に支払うシステムになっています。

しかしそれを知らない消費者はまだまだたくさんいます、

私の実務経験の中でも実際、携帯電話関連の延滞で審査が難航したり、審査に通らなかったケースがたくさんあります。

その中には大企業の従業員や公務員の方もいました。

住宅ローンは多額のお金を長期間にわたって返済しないといけないので、返済履歴は特に重視されるのです。

それは申込者の属性が良くても、免除されるものではありません。

 

国土交通省がどのようにして調査をしたのかは分かりません。

http://www.mlit.go.jp/common/001174891.pdf

ただしはっきり言えることは、審査におけるこのランキングは、実務に関わっている者であればそのほとんどが違和感を感じる結果であるということです。

 

また実務・実情を何も知らないFPや専門家を名乗る人物は、この調査結果を元に、著書やセミナーやコラムで「住宅ローンの審査」について語ることが多くあります。

それを鵜呑みにすることがないよう、ご注意ください。

 

今回は3回にわたって投稿しました。

すべては、消費者に真実を知っていただきたかったためです。

 

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