福岡MPオフィスの松股です。
福岡銀行の住宅ローンは、12月11日の申込み受け付け分から最長借入期間をこれまでの40年から50年に変更しました。
福岡県内に本支店を置く地方銀行としては、2018年の西日本シティ銀行、2021年の佐賀銀行、2022年の宮崎銀行に続いての提供となりますが、他にも福岡ひびき信用金庫や遠賀信用金庫、さらにはネット銀行である住信SBIネット銀行も現在は「50年住宅ローン」を取り扱っています。
この背景には円安や石油価格などの影響を受けて資材価格が高騰していること、ZEH
(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・省エネなど高性能住宅の普及やニーズの高まり等を要因として、一戸建・マンションとも物件価格が上昇していることが考えられます。
そしてそのような状況の中で「いかにして若年層の住宅ローン顧客を獲得できるか」という銀行の狙いがあることは間違いありません。
しかし最長50年まで借りられるからといってもメリット・デメリットがあるので、それについて詳しく述べていきます。
なお金融機関(銀行、保証会社)にはそれぞれ融資条件に「完済時年齢」を定めています。
それは「完済時の年齢が満82歳未満」「完済時の年齢が満80歳未満」などです。
仮に完済時年齢が満82歳未満であれば、借入期間50年で組めるのは31歳の時点までに融資実行をする必要があるということです。
住宅ローンで同じ金額を同じ金利で借りた場合、一般的に取り組まれることが多い「35年返済」と「50年返済」の比較を表にしてみました。
事例として3,000万円を福岡銀行の変動金利(融資手数料型)で借りた場合の比較です。
試算なので、最終回まで金利が変わらない場合(可能性としては考えにくいですが)、そして途中で一度も繰り上げ返済をしない場合であることをご承知おきください。
まず毎月の返済金額を見ると、35年返済で80,895円、50年返済だと59,623円です。
返済年数が長い分、50年返済の方が2万円以上少なくなっています。
一方で返済総額は約180万円も高くなっています。
これは50年返済の方が15年間長く借りることで、それだけ多くの利息を支払うことになるとお考えください。
次に、返済状況です。
毎月の返済を重ねることで、元金がどのように減っていくかを見ていただければと思います。
【35年返済】
【50年返済】
50年返済では毎月の返済金額が低い分、当然ながら毎回の残金が減るペースも遅くなります。
35年返済と比較すると、5年後で約130万円、10年後で約264万円も元金残高に差がついてしまうことがお分かりいただけることでしょう。
よって住宅ローンを50年返済で取り組むことのメリットは「返済金額を低く抑えることができること」と、借入先によっては「より多くの金額を借りることができること」だと言えます。
※ある銀行では、50年返済の申込みでも「35年返済」と同様の審査をするので、50年返済だからといって多くは借りられない規定となっています。
一方デメリットは「元金が減りにくいこと」「支払利息が高くなること」「想定以上に多額の住宅ローンを取り組んでしまいがちであること」だと言えるでしょう。
最長借入期間を50年としている金融機関は、まだそんなに多くはありません。
理由として、借入可能期間を長くすることは金融機関にとってリスクが大きくなるからだと考えられます。
また借りる人にとっても、より長い年数をかけて住宅ローンを返済することにリスクがあるかもしれません。
よって借入期間を50年、またはそれより少し短いくらいの年数で取り組む場合、注意していただきたいことは「自分のライフプランに合った返済計画のうえで取り組めるか?」です。
①返済途中で一部繰り上げ返済を出来そうな時期が何回くらいありそうか?
②定年退職時の残元金を予測できるか?
②定年退職後も返済が続きそうな場合、以降の返済計画は?
超長期住宅ローンをお考えの人は、より慎重な返済計画のうえで取り組んでいただきたく思います。